記事一覧
  1. ざぶクロ
  2. 記事
  3. 優待クロス(つなぎ売り)の仕組みと手数料の全体像──一般信用・制度信用・逆日歩・コストの式
ざぶクロしくみNo.03

優待クロス(つなぎ売り)の仕組みと手数料の全体像──一般信用・制度信用・逆日歩・コストの式

公開 2026年11月3日 更新 2026年11月3日 書いた人 ざぶクロ運営者

本記事は、有料の優待クロスコミュニティ「ざぶクロ」の運営者が書いており、ざぶクロへの案内を含みます。証券会社の広告やアフィリエイトリンクは含みません。記載の料率・条件は各社の公開情報にもとづきます。

株主優待は欲しいけれど、権利日のあとに株価が下がるのは避けたい。そのために使われるのが優待クロス(つなぎ売り)です。この記事では、優待クロスがなぜ株価の値動きで損をしにくいのか、そのうえで「結局いくらかかるのか」を、手数料の式と各社の公式料率で整理します。

この記事で分かること

  • 優待クロスの仕組み(買いと売りを同時に持つ理由)
  • 売りに使う「一般信用」と「制度信用」の違い、逆日歩とは何か
  • 手数料の式と、約定代金 30万円を例にした計算
  • 配当がある銘柄で生じる負担、必要な資金の目安

本記事は優待クロスのコミュニティ「ざぶクロ」の運営者が書いています。数字は 2026年11月3日に各社の公式ページで確認したものです。料率は変わるので、取引の前には各社の最新のページを見ておいてください。

優待クロス(つなぎ売り)とは

優待クロスは、同じ銘柄・同じ株数を「買い」と「売り」で同時に持つ取引です。「クロス取引」「つなぎ売り」とも呼ばれます。

  1. 権利付最終日までに、現物の買いと信用の売りを同じ株数だけ約定させる
  2. 権利付最終日の大引けまで両方を持ち、株主名簿に載る(=優待の権利を得る)
  3. 権利落ち日以降に、持っている現物株を信用売りの返済に充てる(現渡)

買いと売りを同じ株数で持っているので、株価が上がれば買いの利益と売りの損が、下がれば買いの損と売りの利益が、同じ金額で打ち消し合います。たとえば 1,000円の株を 100株ずつ持っていて株価が 100円動けば、買いは ±10,000円、売りは ∓10,000円で合計はゼロです。両方が同じ値段で約定して最後まで持てれば、残るのは株主優待と、取引にかかった手数料です。ただし、片側だけ約定したときや、追証・強制決済が起きたときは相殺が崩れ、損失が出ることがあります。起きやすい場面は「優待クロスで失敗しやすい点と確かめ方」にまとめています。

補足 「買い」は現物で買う方法と、信用で買ってすぐに現引(代金を払って現物株として受け取る)する方法があります。どちらでも権利付最終日に現物株を持っていれば優待の対象になります。信用買いを経由する場合は、現引までの金利がかかります。

「売り」は一般信用か制度信用か

優待クロスの肝は売りの側です。信用取引の売りには2種類あり、どちらを使うかで手数料の性質がまったく変わります。

一般信用の売り 制度信用の売り
株を借りる相手 証券会社(自社で調達した株) 証券金融会社(取引所のルール)
返済期限 証券会社ごとに違う(無期限・最長10年・3年・15営業日・14日など) 6か月
逆日歩 発生しない 発生することがある(事前に分からない)
貸株料 制度より高めのことが多い(年 0.80〜3.90%) 年 1.10〜1.15% が多い
売れる銘柄 証券会社が選んだ銘柄。在庫が尽きると売れない 貸借銘柄に限る

優待クロスで一般信用が選ばれるのは、逆日歩が発生しないからです。貸株料は少し高くても、金額が事前に計算できます。制度信用は貸株料が安い代わりに、逆日歩という「事前に分からない費用」がつきます。

逆日歩とは

制度信用で売りが集中し、証券金融会社の株が足りなくなると、機関投資家などから株を調達します。その調達費用を売り方が負担するのが逆日歩(品貸料)です。

  • 1株あたり・1日あたりで決まり、土日祝も日数に数える(受渡日ベース)
  • 金額は毎日の入札で決まるため、建てた時点では分からない
  • 上限(最高料率)はあるものの、権利付最終日は上限が通常の4倍に引き上げられる。注意喚起や申込停止などが重なると 8倍、臨時の措置で 10倍になることもある [9]
  • 権利確定日が週末にかかると、3日分を支払うことがある

優待の人気銘柄は権利日に売りが集まりやすく、逆日歩が優待の価値を超えることがあります。優待クロスで制度信用の売りを使うなら、「逆日歩が上限(最高料率×倍率×日数)で来ても優待の価値を超えないか」を先に計算する必要があります。この不確かさを避けるために、一般信用の売りがよく使われます。

注意 制度信用で売って逆日歩が付いた場合、損益は株価では相殺できても、逆日歩の分だけ確実に残ります。「過去にこの銘柄は逆日歩がゼロだった」は、今回もゼロである根拠にはなりません。

手数料の式

優待クロスでかかる費用は、次の足し算です。

手数料 = 売買手数料(買い・売り・現渡)
       + 貸株料(約定代金 × 年率 × 日数 ÷ 365)
       + 信用買いを使うなら 金利(約定代金 × 年率 × 現引までの日数 ÷ 365)
       + 配当がある銘柄なら 配当落調整金の差額(一般信用の売りで 配当 × 約20%)
       + 証券会社ごとの細かい費用(権利処理等手数料・事務管理費・プレミアム料など)

一つずつ見ていきます。

1. 売買手数料

主要なネット証券は条件つきで 0円が多くなりました。たとえば SBI証券は「ゼロ革命」(インターネットコースで電子交付などの条件を満たした場合)[1]、楽天証券は「ゼロコース」(SOR の利用同意が必要)[2]、SMBC日興証券はダイレクトコースの信用取引で委託手数料 0円 [3]。松井証券は1日の約定代金合計 50万円まで 0円、100万円まで 1,100円のボックスレートです [4]。マネックス証券は信用の取引毎手数料が約定金額 50万円以下で最大 198円、50万円超で最大 385円(税込)です [6]。現引・現渡の手数料は、この記事で扱う7社とも公式で無料と案内されています(楽天証券は一般信用「短期」の現渡の案内)[1][2][3][4][5][6][8]。

2. 貸株料(売り側の費用。いちばん大きい)

貸株料 = 約定代金 × 年率 × 日数 ÷ 365

  • 日数は新規売建の受渡日から返済の受渡日まで(楽天証券の定義)[2]。約定日ではなく受渡日で数えるので、土日祝も入る
  • 年率は証券会社と区分で違う。2026年11月3日時点の公式ページでは次のとおり
証券会社 区分 貸株料(年率)
SBI証券 無期限 1.1% [1]
SBI証券 短期(15営業日) 3.9% [1]
楽天証券 無期限 1.10% [2]
楽天証券 短期(14日) 3.90% [2]
マネックス証券 無期限 1.10% [6]
マネックス証券 短期(15営業日) 3.90% [6]
三菱UFJ eスマート証券 長期(最長10年) 1.10% [5]
松井証券 無期限 2.0% [7]
松井証券 短期(14日) 銘柄ごと・上限 3.9% [7]
SMBC日興証券 一般信用(3年) 1.90%(公式の表記は 2026年10月現在)[3]
GMOクリック証券 無期限 0.80% [8]
GMOクリック証券 短期 3.85% [8]

「無期限・長期」は年 1.1% 前後が多く(GMO は 0.80%、日興は 1.90%、松井は 2.0%)、「短期」は年 3.9% 前後です。短期は貸株料が高い代わりに、権利日の直前にしか売れない人気銘柄が短期枠で用意されることがあり、使い分けの対象になります。

3. 計算例:約定代金 30万円(株価 3,000円 × 100株)

約定代金 300,000円を、受渡ベースで 12日間持った場合。

使う区分 式 貸株料
無期限 年1.10% 300,000 × 0.011 × 12 ÷ 365 約 108円
短期 年3.90% 300,000 × 0.039 × 12 ÷ 365 約 385円
日興 一般信用 年1.90%・28日間 300,000 × 0.019 × 28 ÷ 365 約 437円

日興の例は「月初に建てて権利日まで 28日持った」という多めの見積もりです。これに信用買いを経由した場合の1日分の金利(日興の制度信用買い 年3.69%・2026年10月現在の公式の値なら 300,000 × 0.0369 ÷ 365 ≒ 30円 [3])を足すと約 470円。ざぶクロの入口ページに載せている手数料の例も、この式(売り側の貸株料+買いの金利1日分)で出しています。

補足 入口ページの例は 2026年9月の権利で計算した概算で、買いの金利は当時の年 3.54% です。この記事は 2026年10月現在の年 3.69% で計算しています。金利の時点が違うだけで、30万円・1日分の差は約 1円です。

つまり、約定代金 30万円なら、一般信用で早めに建てても数百円の桁です。配当がない銘柄で 470円かかった場合、優待の価値が 2,000〜5,000円なら、手数料は優待の 1〜2割ほどになります。逆に、優待が 500円相当で株価が高い銘柄は、手数料のほうが大きくなることがあるので、式に当てはめて確かめておきます。

4. 配当がある銘柄は「配当の約20%」が残る

権利付最終日に信用売りを持っていると、配当に相当する配当落調整金を支払います。一方、現物株の配当は源泉税 20.315% が引かれて入ります。マネックス証券の説明では、現物の配当(税引き後)を受け取り、一般信用の売建玉の配当落調整金(配当の100%)を支払うため、配当金の約20%の差額を負担するとされています [6]。制度信用の売りは支払いが配当の約 84.685% で、差額の出方が違います [5]。

例:1株 20円の配当・100株なら、配当 2,000円に対して約 406円の負担。優待だけを目当てにするなら、配当が大きい銘柄ほどこの負担が増えると覚えておきます。なお、特定口座(源泉徴収あり・配当受入あり)で配当を株式数比例配分で受け取っている場合は、配当落調整金の支払いが譲渡損として自動で通算され、配当の税金が翌年1月に還付される、という案内があります [5]。扱いは口座の設定で変わるので、証券会社の案内と税務署で確認してください。

5. 細かい費用

  • 権利処理等手数料・名義書換料(SMBC日興証券など):買い建玉が権利確定日をまたぐ場合に売買単位あたり 55円 [3]。権利確定日をまたぐ前に現引していればかからない
  • 事務管理費・管理費(楽天証券・マネックス証券など):新規建約定日から1か月経過ごとに 1株あたり 11銭(税込)[2][6]。日興は無料 [3]。長く建てるときだけ意識する
  • プレミアム料(三菱UFJ eスマート証券・松井証券):人気銘柄の一般信用売りに、貸株料とは別に 1株あたりの料金が付くことがある [5][7]。一覧画面で銘柄ごとに表示される

必要な資金の目安

買いの代金と、売りの委託保証金の両方が要ります。保証金は約定代金の 30%(SBI証券は 31%)以上かつ 30万円以上が必要で [1][3]、さらに配当がある銘柄は配当落調整金の分を余力から拘束されることがあります [5]。目安は株価 × 株数の 1.3〜2倍を権利確定日まで口座に置くことです。保証金の下限が 30万円なので、約定代金が小さいと倍率は高くなります。入口ページの例では、株価の 2倍近くを目安にしています。

注意 信用取引は元本を上回る損失が生じることがあります。株価が大きく動くと保証金の追加(追証)が必要になることがあり、買いと売りの損益は相殺されても、保証金の計算では売り建玉の評価損を見るため、急騰した銘柄では追証が出ることがあります。期限までに解消しないと建玉が強制決済され [5]、相殺の前提が崩れます。余力を詰めすぎないことが、手数料以上に大事な注意点です。

一般信用の弱点:在庫

一般信用の売りは、証券会社が自社で用意した株を貸す仕組みなので、在庫が尽きるとその日は売れません。人気の優待銘柄は権利日の数週間前に在庫がなくなることもあり、証券会社ごとに在庫の出る時刻や抽選の仕組みが違います。どの会社をどう使うかは、次の記事「優待クロスに使う証券会社の比べ方」で表にしています。

在庫が早く尽きる銘柄ほど、早く建てる必要があり、早く建てるほど貸株料が増える。この「在庫と貸株料の綱引き」が優待クロスの実務のほとんどです。ざぶクロの入口ページでは、メンバーの取得記録から集計した主な銘柄の最後に取れた日と件数を公開しているので、いつまで取れたかの目安になります。次回も同じ日まで取れるとは限りません。

口座の準備にかかる日数

一般信用売りを使うには、総合口座のほかに信用取引口座が要り、各社の審査があります [3][6]。審査の結果によっては開設できないこともあり、日数は会社と状況で違うので、各社の公式で確認してください。権利月の直前に申し込むと間に合わないことがあるので、余裕を見ておきます。どの会社をどう使い分けるかは、次の記事で公開情報を並べています。

どの銘柄がいつまで取れたか

ざぶクロの入口ページでは、メンバーの取得記録から集計した主な銘柄の、最後に取れた日と件数を公開しています。過去の記録で、次回も同じ日まで取れるとは限りませんが、在庫が尽きる時期の目安になります。参加のしかたはこの記事の末尾から。

まとめ

  • 優待クロスは「買い」と「売り」を同じ株数で同時に持ち、値動きを打ち消して優待だけを受け取る方法
  • 売りは一般信用がよく使われる。逆日歩が発生せず、費用が事前に計算できる
  • 手数料の中心は貸株料 = 約定代金 × 年率 × 日数 ÷ 365。無期限・長期は年 1.1% 前後が多く、短期は年 3.9% 前後
  • 約定代金 30万円を 12日なら百円台、月初から 28日持っても数百円の桁
  • 配当がある銘柄は配当の約20%が負担になることがある(一般信用の売り)
  • 信用取引には損失・追証・強制決済のリスクがある。保証金に余裕を持つ
  • 弱点は在庫。証券会社ごとの在庫の出方は次の記事へ

優待クロスを仲間と一緒に進めたい方は、この記事の末尾からざぶクロの入口ページへどうぞ。しくみ・手数料の例・メンバーの実績の数字を載せています。

出典(確認日 2026年11月3日)

  1. SBI証券「一般信用取引について、制度信用取引と比較しながら解説」 https://www.sbisec.co.jp/ETGate/?_ControlID=WPLETmgR001Control&_PageID=WPLETmgR001Mdtl30&_ActionID=DefaultAID&_DataStoreID=DSWPLETmgR001Control&OutSide=on&getFlg=on&burl=search_domestic&cat1=domestic&cat2=info&dir=info&file=learn_margin_compare.html / 同「信用取引の現引・現渡の手数料について」 https://faq.sbisec.co.jp/answer/5edde2cb878c430011c178ce
  2. 楽天証券「信用取引 手数料/金利/貸株料」 https://www.rakuten-sec.co.jp/web/domestic/margin/commission.html / 同「つなぎ売り」 https://www.rakuten-sec.co.jp/web/lp/margin_bridging/
  3. SMBC日興証券「日興イージートレード信用取引」 https://www.smbcnikko.co.jp/products/stock/margin/online/ / 同「ダイレクトコース」 https://www.smbcnikko.co.jp/service/course/direct/index.html
  4. 松井証券「短期信用取引 手数料」 https://www.matsui.co.jp/stock/margin/sh-margin/fee/
  5. 三菱UFJ eスマート証券「信用取引」 https://kabu.com/item/shinyo/default.html / 同「優待クロス」 https://kabu.com/kabustation/manual/incentive02.html / 同「信用取引の配当金と優待クロス取引とは?」 https://kabu.com/item/shinyo/technique/yutai.html
  6. マネックス証券「費用」 https://info.monex.co.jp/margin-trade/rule/cost.html / 同「つなぎ売り」(手数料の記載を含む) https://info.monex.co.jp/margin-trade/tsunagiuri.html / 同 FAQ「国内信用取引の現引・現渡の手数料」 https://faq.monex.co.jp/faq/show/34?site_domain=default
  7. 松井証券「信用取引の金利・諸経費について」 https://support.matsui.co.jp/faq/show/1844 / 同「短期信用プレミアム空売り」 https://www.matsui.co.jp/stock/margin/sh-margin/premium/
  8. GMOクリック証券「取引ルール(信用取引)」 https://www.click-sec.com/corp/guide/kabu/shinyo/rule/rule_shinyo.html / 同 FAQ「信用取引の現引・現渡に手数料はかかりますか?」 https://faq.click-sec.com/faq/show/60?category_id=81&site_domain=default
  9. 逆日歩の上限と倍率:日本証券金融「品貸入札、逆日歩、最高料率、応札ランク」 https://www.taisyaku.jp/about/backwardation/ / 日数の数え方:SMBC日興証券「逆日歩の計算方法」 https://www.smbcnikko.co.jp/products/stock/margin/knowledge/013.html

本記事は投資判断を提供するものではなく、個別の銘柄の売買や特定の証券会社の利用を勧めるものでもありません。信用取引には元本を上回る損失が生じる可能性があります。制度信用の売りには逆日歩がかかることがあり、追証の未解消・返済期限の到来・証券会社の在庫不足などで建玉が強制決済されることがあります。記載の手数料・料率・制度は確認日時点の各社公開情報にもとづきます。最新の条件は各社公式サイトでご確認ください。お取引はご自身の判断と責任でお願いします。

その不安、ひとりで抱えなくて大丈夫。
ざぶクロは、株主優待の「優待クロス(つなぎ売り)」を仲間と一緒に迷わずはじめられるコミュニティです。しくみ・手数料の例・メンバーの実績の数字・参加のしかたは入口ページに。月1,000円(新規メンバーは入会月無料)・完全招待制。
入口ページも本記事も、投資判断を提供するものではありません。信用取引には損失・追証・強制決済のリスクがあります。

ざぶクロの入口ページへ →初月
無料
関連する記事